REscanで遠隔にて建物内のインテリアを体感


SRIのスピンアウト企業「REscan」が商業用不動産のあり方を変える


デジタル時代は多くの扉を開き、世界中の場所や環境を遠くから見たり、聞いたり、体験したり、探索することができるようになりました。ですが、例えばGoogle Earthは建物の玄関までは連れて行ってくれますが、その玄関は開きません。SRI VenturesからスピンアウトしたREscanの共同設立者であるRobert HermanとBotond Bognarは、デジタルアプリケーションに室内空間を探索できる可能性を見いだしました。不動産投資のバックグラウンドを持つ二人は、空間の寸法的な完全性だけでなく空間の内容を真に理解することによって、室内空間の管理を検索、分析、定量化できる方法を見出したいと考えました。

大抵の場合、商業用不動産は物件やその細部を見に出掛けるなど多くの移動が伴います。そして、大規模な施設の賃貸や購入を決定する際には、写真や間取り図だけでは多くを把握するには限界があります。実際にその場所を歩いて3Dで見ることは、その空間が本当にどのようなものか、どのような可能性があるのかを知るために非常に重要です。しかし、何百、何千マイルも移動するのは時間もお金もかかるので、簡単なことではありません。また、現在のコロナ禍では、渡航制限や安全面への配慮など、さらに困難な状況になっています。

REscanは、商業用不動産のインテリアを、見込みのある顧客やテナントに対して遠隔地から表現することに専念しています。REscanは、ビルの内装をスキャンしてデジタル化し、モデル化して3Dで表現するシステムを開発しました。REscanはSRI Internationalと共同でヘルメットに装着するハードウェアキャプチャデバイスを開発しました。ユーザーは、このデバイスを搭載したヘルメットを装着して歩きながら空間のスキャンを行います。Hermanは、「カメラやLIDARなどのセンサーを搭載して人間の視点から空間をスキャンする、自動運転のマッピングカーがヘルメットになったようなものだ」と述べています。

SRIインターナショナルの協力のもと、4つの「山」に挑む

広い室内空間をモデル化して表現するには、多くのデータが必要です。REscanは、プロジェクトごとに何テラバイトものデータを取得します。Hermanは、「ハードウェアによるデータ取得、意味理解(semantic understanding)による3D再構成、データ管理、ユーザーインターフェースとインタラクション、この4つの「山」を乗り越える必要があった」と語っています。

SRIは、特に最初の2つの課題であるハードウェアキャプチャと3D再構成について、貴重な支援と専門知識を提供しました。SRIのCenter for Vision TechnologiesSupun SamarasekraRakesh “Teddy” Kumarは、ビジュアルスキャン技術の開発で重要な役割を果たし、Senior Research Development ScientistのAvi Ziskindは、人工知能、深層学習、撮影した視覚・空間データの3Dモデリングに取り組みました。

REscanのスキャンニングハードウェアは、携帯可能(頭部に装着)、非破壊的(人が空間を歩くだけ)、スキャンするために施設を停止する必要がないなど、多くの大きな利点を備えています。また、スキャン時に取り込んだ人の画像や個人情報をソフトウェアが自動的に削除するためプライバシーが確保されます。空間のスキャンが完了すると(最大25万平方フィート、1時間あたり1テラバイトのデータ)クラウドにアップロードされ、そこで分析、意味理解、モデリングが行われます。最終的な成果物であるレンダリングされた「3D体験」は、REscanビューアーの流動的で直感的なユーザーインターフェースを通じて、コンピューターやモバイルデバイスで見ることができます。

SRIの経験と専門知識の支援により、REscanは商業用不動産の顧客だけでなく、空軍などの他の組織にも製品を提供する態勢を整えています。REscanのウェブサイトでは、ご自身のスマートフォンでこのイノベーションを体験する事ができ、サンプルとしてサンマテオ郡歴史博物館(カリフォルニア州レッドウッドシティの旧市庁舎)のフルスキャンを見ることができます。最近では、サンフランシスコのショッピングモールや国際空港の500万平方フィートのターミナル全体をスキャンしています。REscanの可能性は、商業用不動産の取得にとどまらず、大規模な店舗などの定期的な現場点検を容易にする機能を提供することができます。

REscanはまだ比較的新しいベンチャー企業ですが、すでに注目されていて、業界では賞を獲得しています。REscanは、2021年にスキャナーヘルメットでMUSE Design Awardを受賞し、同年のRed Dot International Design Awardsではシステム全体とユーザーインターフェース、インタラクションで最優秀賞を受賞しています。REscanは、SRIの膨大な技術的知識と経験を活用する企業の「多くの例の一つ」です。SRIとREscanのコラボレーションとイノベーションは、離れた場所からの室内空間での体験を現実のものにしています。


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