SRIのHuman Sleepラボ、睡眠研究のための最先端のテクノロジーを精査する


消費者向けのウェアラブルデバイスについて調査に乗り出す


現在多くの人が活用しているウェアラブルデバイスは、数多くの消費者の睡眠を観察して詳しく記録するなど「睡眠の追跡」を可能にする幅広い新技術の一部で、最先端技術として様々な企業がこのデバイス向けに新しいアプリや機能の開発を猛スピードで進めています。このテクノロジーには臨床医や研究者も注目しており、研究を進めるために必要な標準的な臨床研究や試験などを補完するものとして、市販のデバイスを活用できないかと考えています。

Massimiliano de Zambotti博士は、ウェアラブル端末の臨床科学における商用的可能性を見出しています。SRI International のHuman Sleep Research Programの科学者として、初めて消費者向けのウェアラブル技術を目にしたとき、de Zambotti博士は非常に大きな可能性を実感しました。

「私たちは当時、すべてラボ内で青少年を対象とした睡眠ポリグラフィー検査の実験研究を行っていました。その時、被験者の一人がJawbone UPを装着してラボにやってきたのです。Jawboneのデバイスはもともと歩数を数えて運動量を測定するためのものでしたが、睡眠に関する機能も備えていたのです。このデバイスには、コンパニオンアプリが付属しており、そのアプリから睡眠パターンを確認することができました。当時、私たちは研究用のアクチグラフィーを使っていました。これは、手首に装着するシンプルな加速度センサーで、被験者がラボに来る前までの通常の睡眠と覚醒パターンを解析できるようになっていました。しかし、この器具は数百ドルと高価で、しかもかさばるもので、思春期の青年たちは身に着けるのを嫌がりました。さらに、器具の設定や配布、そしてデータの回収には技師が必要でした。」とde Zambotti博士は述べています。

アプリで管理が可能な小型デバイスのベータ版での試験を実施したde Zambotti博士は、その可能性に大いに興味を惹かれましたが、まずこのテクノロジーが臨床研究に必要な一定の性能基準を満たしているかを判断する必要がありました。「性能はどうなのか、アミューズメントの範囲以上の精度があるのか、どうやって判断すればよいのでしょう。このような機器は、厳密なプロセスにて評価する必要があります。」と博士は述べています。
de Zambotti博士とそのグループは、このデバイスの性能を臨床の現場で評価するにあたり、一貫性もなければ規格性もないことを懸念していました。「標準規格すらなかったのです。ある人は機器の精度を証明するために相関関係を調べて、ある人は特定の解析を行っていました。私たちは、この機器が信頼できるものであるかどうかを判断するために理解しなければならないことを基にした試験を実施したのです。」

このように連携や統一性が欠如していることから、研究者が潜在的に価値のあるデバイスの性能データを入手しても、残念ながら別の手法で評価したデータと直接比較することができませんでした。このような非効率な状態は非常にもったいないものです。

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ウェアラブルデバイスの評価を標準化する

この課題を解決すべく、SRIのSleep Labでは「睡眠」や「睡眠に関連する生理機能と様々な現象」を評価する、各種の機器や手法を検証する一連の研究を実施しています。十分な情報を得た上で睡眠に関する市販のウエアラブルデバイスなどのテクノロジーを研究や臨床の場でいかに活用できるかについて検討したのです。

特に、de Zambotti博士はLuca Menghini博士と共同で睡眠追跡テクノロジーの性能を正確に検証し、基準となるゴールドスタンダード(最も標準的とされる手法)と各テクノロジーの性能を研究者が比較できるように、標準化した試験や解析のパイプラインを開発しました。「私たちは、このような研究を体系的に行いたかったのです」と、de Zambotti博士は述べています。

このチームの評価に関するフレームワークとオープンソースコードの詳細を記した論文は、好評を博しています。特筆すべきは、このイニシアティブでは臨床でのケアと研究、および商用テクノロジーの間の橋渡しをする必要があったことです。「この評価パイプラインは、この分野の他の専門家や業界の主要企業によってすでに使われ始めています」とMenghini博士は述べています。

睡眠テクノロジーの厳格な性能評価の実施についてSleep Health誌に論文を発表

de Zambotti博士とNational Sleep Foundationの機関誌Sleep Health誌の編集長Orfeu Buxton博士は、睡眠の研究や睡眠の臨床医学において、規制外のテクノロジーが統一性もなく見境もなく使用されることを回避すべく、睡眠テクノロジー分野の規制と標準化が必要であるとの見解で一致しました。この課題に対応すべく、両博士は睡眠テクノロジーを適切に評価するイニシアティブを進め、性能評価に関する研究を扱う新しい論文を執筆するためのチームを立ち上げました。Meredith Wallace博士、Luca Menghini博士、Michael Grander博士、Susan Redline博士、Ying Zhang博士など学際的な専門家がこのイニシアティブに参加し、ウェアラブル技術の評価に関する「Sleep Health Expert Task Force(睡眠健康専門家タスクフォース)」を結成したのです。このタスクフォースはウェアラブルテクノロジー評価の研究に関する根拠や優先順位、基準を説明する論文をSleep Health誌に発表しました。

「著者、査読者、読者の全員が、睡眠の健康に関するデバイスの性能とその関連するアルゴリズムを評価するための体系的かつ厳格なアプローチを高く評価すると確信しています。これらの規格は、質の高い論文や睡眠に関する理解の向上、睡眠の健康(Sleep Health)に関する分野の技術革新の進歩に貢献する、デバイスの品質に関する明確かつ達成可能な基準を提供することでしょう。」と、Buxton博士は述べています。

Buxton博士は次のように説明しています。「私たちがSleep Healthで設定した基準は、研究者が研究結果を報告する際の一貫性を保証するものです。つまり、デバイスを活用しようと思う臨床研究者は、構造化された論文を検索すると、誰でもそれらの要約を見ただけでも研究の主な指標とデバイスの性能がわかります。データを利用する人は誰でも、研究の質という点でしっかりとした基準が課せられるのです。」「我々は、研究と臨床の観点から、あらゆる新しい睡眠テクノロジーを厳格に評価するベンチマークを設定しましたが、機器のエンジニアやメーカーが自社の技術を適切に試験することも歓迎し、またそうすることを奨励します。もし企業がこのベンチマークを達成したいのであれば、このガイドラインの順守を検討してほしいと思います。これにより、企業の業務に対する価値が向上し、エンドユーザーに対する透明性と品質も向上します。」とde Zambotti博士は述べています。

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推奨される解析手順を示したフローチャート

睡眠テクノロジーの未来

Sleep Healthの専門家タスクフォースは、今後も臨床研究と商業の世界の架け橋となる重要な役割を担っていきます。

「Sleep Healthは、睡眠が人々の健康に果たす役割を探求し、睡眠と健康に関する社会科学な視点を解明する学際的な学術誌です。私たちは、この取り組みに期待を寄せています。提案した基準は厳格なものであることから、睡眠に関する新たなテクノロジーは最終的に、現在期待されているようなハイペースで、革新的な新しい睡眠と健康に関する研究を推進する要素となるのではないでしょうか。」とBuxton博士は述べています。

de Zambotti博士はSRIインターナショナル(sri.com)のプリンシパルサイエンティストであり、Lisa Healthの最高科学責任者(CSO)兼共同設立者です。de Zambotti博士の睡眠テクノロジーに関する研究は、Fiona Baker博士が率いるSRI InternationalのHuman Sleep Research Programの下で行われています。

Buxton博士は、ペンシルベニア州立大学の社会科学研究所であるElizabeth Fenton Susman Professor of Biobehavioral Health (Elizabeth Fenton Susman教授生物行動健康学研究所)との共同学部での教授、ならびにSleep, Health & Society Collaboratoryのディレクターを兼務しています。また、Sleep Health誌の編集長も務めています。


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