
機械学習を活用したSRIの地理空間分析プラットフォームが米国地質調査所(USGS)に採用され、鉱業界に新しいAIツールを提供
今日、鉱物の発見の多くは人里離れた峡谷ではなく、コンピューターの画面からスタートしています。現在は地質図や鉱物分析結果、地球化学標本、リモートセンシングデータなど、膨大な量のデジタル情報が利用可能であり、これらは鉱業界において鉱山候補地の最も有望な場所を正確に絞り込むのに役立っています。
とはいえ、数十年にわたり収集されてきた情報は、互換性のない多種多様な形式で存在しています。このため、米国地質調査所(USGS)の科学者たちは、鉱床の予測情報を得るために、昔の地図やその他のデータを手作業で突き合わせるという大変な手間をかけています。この状況はまた、鉱山会社が米国内の新規鉱山候補地の探査を行う際に、USGSのデータと自社の独自データを組み合わせて活用しようとするときの障壁にもなっています。
リチウム、黒鉛、イッテルビウムなど、数十種類の重要鉱物は、高度なIT技術や防衛技術を支えています。これらの鉱物を効率的に確保できる国は、経済面および安全保障面で優位に立てるのです。
これがそれほど喫緊の課題であるのはなぜでしょうか。その主な理由は、レアアース(希土類元素)の位置の特定と開発をめぐる世界的な競争が激化する中、米国にとって、既存データをすみやかに活用し、レアアースやその他重要鉱物の新たな供給源を開拓することが急務となっているからです。
SRIの研究者たちは重要鉱物の新たな国内供給源の必要性を認識し、鉱物資源を速やかに発見できるよう、機械学習を活用した手法を開発しています。
国の安全保障と産業競争力における鉱物資源
SRIの鉱物探査に関する取り組みは、USGSの重要鉱物評価プロセスに焦点を当てた研究プログラム「CriticalMAAS」でUSGSと米国防高等研究計画局(DARPA)がSRIを起用したときに始まりました。
「USGSの標準的な重要鉱物の評価ワークフローでは、単一の鉱物資源に対して最大2年を要する場合があります。今回の目標は、このプロセスを大幅にスピードアップさせるため、AIの支援による自動化機能を構築することでした」と、SRIのCriticalMAASプロジェクト主任研究員であるHang-Pang Chiuは述べています。
これは単なる机上の空論ではありません。リチウム、黒鉛、イッテルビウムなど、数十種類の重要鉱物が高度なIT技術や防衛技術を支えています。これらの鉱物を効率的に確保できる国は、経済面および安全保障面で優位に立てるのです。米国では政府の取り組みによって既に国内の鉱業市場に変革の動きが見られ、民間企業も国内の採掘活動を拡大する機会が増大していると捉えています。
CriticalMAASプログラムの初期段階での成果が注目を集めたのは、2025年の初めにあるハッカソン(hackathon)がAIツールを活用して、USGSの重要鉱物評価にかかる期間を2年からわずか2日半に短縮できることを実証してみせたときでした。
データを整理することで、予測精度が向上
CriticalMAASのプログラムに取り組んでいるSRIのCenter for Vision Technologiesのチームでは昨年、AIを活用した鉱床発見において2つの重要な側面に前進がありました。既存の地質学文書から関連データを抽出すること、そして特定の鉱床を発見できる可能性が非常に高い場所を予測するAIベースのシステムを構築することです。
SRIが知識の抽出に関して完了させた研究は、南カリフォルニア大学情報科学研究所のCraig Knoblock氏と協力し、多種多様なUSGSの文書から有用なデータを落ち穂拾いのように収集することに焦点を当てました。このチームは大規模言語モデル(LLMs: Large Language Models)を用いて、鉱山業に関する昔の報告書を含む文書を解析し、位置データのラベリングや鉱床の種類別分類ができる手法を標準化して自動化するとともに、データを階層化してUSGSの地質学者が検索クエリを自在に駆使できるようにしました。
「地質学者が使用する用語は時代とともに変化しており、昔の記録と照合するのが難しいのです。LLMsとその埋め込みモデルは、このような意味の変化に対応できます」 ―Meng Ye
「地質学者が使用する用語は時代とともに変化しており、昔の記録と照合するのが難しいのです。LLMとその埋め込みモデルは、このような意味の差異に対応できます」とSRIのデータ抽出研究に携わった主任研究員のMeng Yeは述べています。
SRIはこのプラットフォームの予測マッピング機能を構築するため、自己教師あり学習(SSL: Self-Supervised Learning)への依存度が高い機械学習手法を開発しました。新たな鉱床を予測するときの最大の課題は、データラベルが不足していることです。非常に価値の高い鉱物の中には、米国内の採掘可能地がごくわずかしか知られていないものもあります。また、全般的に見て、関連データの多くはラベリングされていないことから、AIシステムの活用が困難です。自己教師あり学習は、このように適切にラベリングされた情報が不足している場合でも、鉱物探査に適した場所の一般的な特徴を学習できます。
「このような一般的な特徴は、微調整を加えれば、有望な鉱物資源マップの作成に活用できます」と、SRIのシニアコンピューターサイエンティストであるAngel Darunaは述べています。
鉱業界で効果が期待される新しいAIツール
今では、USGSの地質学者たちがSRIのプラットフォームを重要鉱物の評価に積極的に活用していることを受け、SRIは鉱業分野の他の課題にもこの機能を応用し、意思決定の迅速化が図れるようマルチモーダルな地理空間データを活用することを目指しています。
例えば、このプラットフォームは鉱物探査のリスクを低減するとともに、費用がかさむ現地での作業を現地以外で行う分析に置き換えることができます。鉱物の発見における大きなコストの1つが試掘です。試掘は新しい鉱山の発見・開発に不可欠ですが、試掘場所は推測ゲームのように当てずっぽうになりがちです。SRIの地理空間推論アプローチを活用すると、鉱山会社は公開データと自社の独自ログを統合できるようになり、試掘の回数を減らせる可能性があります。
さらに、SRIのアプローチに内在する「説明可能性(Explainability)」は、鉱物探査におけるリスクを低減するよう設計されています。モデルの確実性や不確実性に関する正確で定量化可能な情報があれば、取締役会や規制当局は、確信を持ってデータに基づいた意思決定を下せるようになります。このプラットフォームは将来的に、実現可能性調査(設計や許認可、環境影響評価)の支援や、地域の予備調査(空中物理探査や衛星画像)の統合、さらには土地の状況や構造帯などの分析にも利用できる可能性があります。
Chiuはまた、次のように述べています。「鉱業以外の分野での応用も視野に入れています。例えば、精密農業や再生可能エネルギー発電所の立地選定など、地球物理学からみた現状が決定的な要因となる、あらゆる産業のワークフローが考えられます」。
SRIの地理空間推論に関する取り組みについての詳細は、こちらまでお問い合わせください。
本資料は、米国防高等研究計画局(DARPA)の契約番号HR00112390130に基づく支援を受けて作成されたものです。
(This material is based upon work supported by the Defense Advanced Research Projects Agency (DARPA) under Agreement No. HR00112390130.)


