SRI International、AIを活用した創薬開発自動化プラットフォーム「SynFini™」の日本市場での提供開始

SynFini-Platform

SRI International(本社:米国カリフォルニア州メンローパーク、日本支社:東京都千代田区、以下SRI)はシリコンバレーの独立系非営利研究開発機関であり、必要不可欠で新しい技術を市場投入することに注力しています。この度SRIは、「SynFini™(シンフィニ)」テクノロジープラットフォームの、グローバルな戦略的パートナーシップとコラボレーションを日本国内に拡大したことを発表しました。「SynFini」は創薬と開発プロセスを加速するために設計された完全に自動化された合成化学プラットフォームです。「SynFini」のシステムは、医薬品に使用される化学物質の設計、発見、開発をサポートするツールを統合しており、低コストで新薬を開発することが可能になります。

何世紀もの間、医薬品は複雑な創薬プロセスが手動で行われていたため、合成経路の設計に数十時間、実装と最適化には数か月かかるケースもありました。こうした課題を解決するため、SRIは2015年からSynFiniの開発を進め、翌年、SRIは米防高等研究計画局(DARPA)からプロジェクトのサポートを請け負いました。2019年には人工知能(AI)を組み込むことで完全に自動化されたシステムが完成しました。

SynFiniには、機械学習ソフトウェアプラットフォーム(SynRoute™)、反応スクリーニングプラットフォーム(SynJet™)、マルチステップで自動化されたフローケミストリーおよび開発プラットフォーム(AutoSyn™)が含まれています。すでにSRIでは、リバビリン、タリバビリン、チアゾフリンというヌクレオシド系抗ウイルス剤を13時間で合成することに成功しており、これは手動に比べて約10分の1以下の時間です。

「SynFini」の各コンポーネントは、従来の化学合成プロセスと比較して大きな利点をもたらします。

  • SynRoute™は、目的とする化合物の合成に向けた計画を提供するツールです。AI /ビッグデータと機械学習を利用して、ソフトウェアプラットフォームはルート設計を数分で分析および最適化し、コスト、成功の可能性、実装の容易さに基き、最適な合成計画に優先順位を付与します。
  • SynJet™は、最適な反応条件を見つけるための迅速な反応スクリーニングおよび最適化(RSO)するためのハイスループットな自動化学システムです。SynJetは、インクジェット印刷プラットフォームと標準的なラボ分析を利用することで、従来の手作業では最適化に数週間かかる可能性のあるマルチステップの化学反応を数時間で実行することができます。時間、温度、化学量論、pH、試薬、溶媒、基質などの重要なパラメータは、完全に自動化されたプロセスで実験計画法(DoE)を使って迅速に探索することができます。SynJet は独立型のモジュールですが、バッチ合成とフロー合成の両方にマルチステップのルート最適化の起点を提供するように設計されています。
  • AutoSyn™は、マルチステップ合成を確実かつ再現性高く実行する新しいフローケミストリーハードウェアプラットフォームです。このシステムは、小型化されたベンチスケールの「化学プラント」のように構成されており、分析機能が統合されています。モジュール式コンポーネントにより、温度と圧力の変化に対応し、カスタムおよび既製のリアクター技術の統合を可能にします。AutoSynは、3,000以上の異なる多段階反応構成へのアクセスを提供し、2時間以内に分子の合成を切り替えることができ、ミリグラムからグラムスケールの合成を行うことができる柔軟性を備えています。

また、SRIはさらに高度なAI機能を組み込むために、AI創薬業界を牽引するグローバル企業と提携しています。2020年3月、SRIはフランスのIktos社と提携し、同社の新薬設計モデリングAIを「SynFini」と統合することで、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどのウイルス感染症における新治療薬候補の特定の加速を目指しています。また同年5月、SRIは腫瘍学の創薬プロセスをより一層迅速化するために、人工知能(AI)を駆使したグローバルな創薬企業で、イギリスに拠点を置くExscientia社と戦略的提携を締結しました。同社の先進的なAI設計技術とSynFiniを融合することにより、SRIは価値の高い抗がん剤をターゲットとする創薬候補の特定の加速化を目指します。

SRIは低分子の発見・開発の分野において、「SynFini」プラットフォームを活用したパイプラインの加速と拡大を目的とした革新的なソリューションを目指す企業との提携を募集しています。用途としては、製薬・化学業界における創薬・分子探索やプロセス開発などが挙げられます。

今回の日本市場での提供開始について、SynFiniプログラムの責任者でありSRIのバイオサイエンス部門でCSOを務めるNathan Collinsは次のように述べています。「新薬の発見には通常3~5年かかりますが、新型コロナウイルスのような新しい感染症の治療薬の発見が急務となる中、創薬と開発プロセスの加速化が求められています。『SynFini』を活用いただくことで新薬の発見に要する時間の大幅な短縮に貢献できることを期待しています。」

SRI Japanの日本代表、バイスプレジデント/ビジネス デベロップメントであるYoussef Iguiderは次のように述べています。「この度、日本のバイオテクノロジー企業や製薬企業との共同創薬プログラムで『SynFini』プラットフォームをご利用いただけるようになったことを大変嬉しく思います。SRIは米国の非営利組織として、『世界中の人々をより安全に、より健康的に、より生産的にするためのソリューションをユーザーと共に創造する』ことをミッションに掲げています。私たちは55年以上にわたり、日本の有名企業や大学などと協力して新技術の研究開発を進めてきました。昨今、新型コロナウイルス感染症の世界的な混乱が続く中で、国内の製薬会社、そして教育・研究機関と共に日本の皆様の健康促進を支援したいと考えております。」

関連情報

SRIのNathan Collinsは、米国時間2020年12月2日-3日にわたって開催される、IEEE主催のオンラインインベント「IEEE InTech: A Forum on the Tech Industry’s Response and Resilience to Covid-19」に登壇します。AIと自動化の組み合わせが、いかに分子探索の効率化にパラダイムシフトを起こしているか解説する予定です。詳細と登録については次のリンク先(英語)をご参照ください。

※本資料は、契約番号W911NF-16-C-0051のもと、国防高等研究計画局(DARPA)から助成を受けた活動に基づいています。

また、掲載されたされている意見、知見、結論、推奨事項はすべて著者のものであり、必ずしも国防高等研究計画局(DARPA)の見解を示すものではありません。

SRI インターナショナルについて

SRI インターナショナルは1946年に米国カリフォルニア州メンローパークにて設立された非営利研究開発機関です。SRIにより実現されたイノベーションは、新しい産業や製品、何十億ドルもの市場価値、そして、インターネットやコンピュータマウス、siriや遠隔手術ロボットなど、人々が日常生活の中で受けている多くの恒久的な社会的恩恵を創出してきました。また、様々な技術のライセンス化、SRIからのスピンオフ・ベンチャーを通して、新たなイノベーションを継続的に次々と市場に紹介しています。

SRIのバイオサイエンス部門は、創薬や診断薬に関わる生物医学の基礎研究、前臨床や臨床開発などを行なっています。これまでに100以上の薬を臨床試験段階に進めることに成功し、多くの市販されている医薬品を創出してきました。また、現在治療法がない疾患に対する医療上のニーズを実現するため、様々な治療分野の新しいプラットフォームやプログラムに焦点を当てています。SRIのバイオサイエンス部門は、国内外の小規模の企業から世界トップ10の製薬会社、及び他業種のパートナーまで幅広く協力しています。SRIの詳細は、https://www.sri.com/ja をご参照ください。

<本件に関する報道関係者お問い合わせ先>

SRI International広報代理  ホフマンジャパン株式会社

担当:佐藤・小嶋・小倉

EMAIL: SRI_JP@hoffman.com


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