国際女性デー(International Women’s Day)をお祝いして

Helen Chan Wolf with Shakey
Helen Chan Wolf and Shakey
Helen Chan Wolf とShakey(世界初の自律型移動ロボット)

国際女性デーを記念し、SRIにてコンピュータサイエンスに根本的な進歩をもたらした4人の女性の物語をご紹介


女性は、コンピュータサイエンスの最も初期の時代から中心的な存在でした。Ada Lovelaceは、コンピュータのために設計された最初のアルゴリズムを書いた人物です。Grace Murray Hopperは、初期のコンパイラツールのいくつかを開発し、COBOLの開発を推進しました。COBOLは現在も多くの政府や金融機関のインフラの基盤となっています。1940年代には、Frances Spence,、Jean Bartik,、Kathleen Antonelli、 Marlyn Meltzer、Ruth Teitelbaum、Betty Holbertonは、最初の汎用電子計算機の1つであるENIACをプログラミングしました。彼女たちは、実際に機械に触れずに複雑な計算を手作業で行っていました。

Radia Perlmanのスパニングツリープロトコル(spanning-tree protocol)は、現代のネットワークの仕組みの基盤となりました。Fei-Fei Liは、大規模データセットであるImageNetを共同で作成しました。これはディープラーニング革命、そして現代のAIの多くを促進するきっかけとなりました。

SRIの80年の歴史において、最も尊敬されているコンピュータサイエンスのイノベーターの中には、多くの女性が含まれています。

国際女性デーを記念して、SRIでの仕事を通じて現代のコンピューティングに根本的な進歩をもたらした4人の女性たちの物語をご紹介します。

Elizabeth “Jake” Feinler

Elizabeth “Jake” Feinlerは、当初は生化学者として教育を受けていましたが、1960年にSRIに入社した際に、情報科学という新興分野へと進路を転換しました。SRIのコンピューティングとネットワーキングの研究が加速するにつれ、FeinlerはDouglas EnglebartのAugmentation Research Labにおいて重要なリーダーシップを担うようになります。彼女は、誕生したばかりのNetwork Information Center(NIC)の運営を担当しました。NICは、ARPANET、その後継である国防データネットワーク(Defense Data Network:DDN)、そして最終的には現代のインターネットのための中央情報ハブとして機能していました。NICは、ユーザーをサポートするためにネットワーク関連文書を公開・配布するだけでなく、オンライン問い合わせシステムも開発しました。Feinlerは後に、NICを「いわば先史時代のGoogleのようなもの」と表現しています。

Feinlerにとって特に重要な出来事の1つは、1980年代半ばにNICがトップレベルドメイン(.com、.org、.netなど)を開発したことでした。これらは現在でも使用されています。NICはまた、初期ユーザーに対する最初のドメイン名の割り当ても担当していました。彼女のチームは、1985年3月15日に、コンピュータ製造会社に対して最初の商用ドメイン名「symbolics.com」を登録しました。これはインターネット上で最初に登録されたドメイン名です。

こうした先駆的な功績により、Feinlerは2012年にInternet Hall of Fame(インターネットの殿堂)に選出されました。

Helen Chan Wolf

SRIは、AI革命の立ち上げにおいて中心的な役割を果たしました。その初期の研究を支えた人物の1人が、AIの先駆者であり、自律ロボット工学の発展に大きく貢献したHelen Chan Wolfです。

SRIに入社する前から、Wolfは大胆で先見性のある科学者として評価されていました。雑誌Wiredの特集「顔認識の秘められた歴史」では、SRI入社以前に彼女が行っていた顔認識に関する重要な研究の一部が紹介されています。

Wolfは、重要な転換期にSRIに入社しました。彼女がPanoramicからSRIに移った1966年、SRIはArtificial Intelligence Center(人工知能センター)を設立しました。このAI Centerは、AI技術に特化した世界初の研究所の1つであり、今年で設立60周年を迎えます。Wolfは、世界初の自律型移動ロボットであるShakey(人工知能によって移動し推論を行う最初のロボット)の開発や、自動顔認識分野の確立において重要な役割を果たしました。

「Helen Wolfは私たちの主要な開発者の一人でした」と語るのは、SRIの元Principal Scientistであり、ShakeyプロジェクトでWolfと緊密に協力したTom Garveyです。1973年のShakeyの象徴的な写真の1つには、彼女と一緒に写るGarveyの姿も見られます。「彼女はShakeyプロジェクトに関わる多くのサブシステムの開発を担当しました。彼女の研究の大部分はComputer Vision Systemsに焦点を当てたもので、画像を取得するためのセンサー用コードと、Shakeyの環境内の物体を識別するためにその画像を解釈するアルゴリズムの両方を開発しました。」

その後のSRIでのキャリアにおいても、Wolfは視覚とAIの研究を続け、線形輪郭抽出アルゴリズムによる曲線分割といった新たな問題に対するの新たなアプローチの開発に貢献しました。

Barbara Grosz

Barbara Groszは、自然言語処理とマルチエージェントシステムという、非常に大きな影響力を持つ2つのコンピューティング分野の成熟に貢献した主要人物として知られています。

ハーバード大学で輝かしいキャリアを積む以前、Groszは1970年代から1980年代にかけて10年以上SRIで研究を行いました。2015年のインタビューで彼女が述べたように、SRIでの研究の最も重要な成果の1つは、対話の最初の計算モデルを構築したことでした。彼女はまた、1980年代初頭におけるSRIの複数の研究プログラムで重要な役割を果たした中核的な自然言語処理システム「Dialogic」の開発にも関わりました。さらに、スタンフォード大学およびXerox PARCの研究者との協力のもと、GroszはSRIを代表してCenter for the Study of Language and Information(言語情報研究センター)の共同設立を主導しました。このセンターは、その後数十年にわたり認知科学分野における画期的な共同研究を支えることになります。

その後、ハーバード大学ではRadcliffe Institute for Advanced Study(ラドクリフ高等研究所)の所長を務め、2005年のHarvard Task Force on Women in Scienceの議長を務めました。さらに近年では、コンピュータサイエンスのカリキュラムに倫理的推論を取り入れる新たな取り組みを共同設立しています。彼女はAssociation for the Advancement of Artificial Intelligence(AAI)の初の女性会長でもあり、2015年にはIJCAI Award for Research Excellence(IJCAI研究優秀賞)、2017年にはAssociation for Computational Linguistics Lifetime Achievement Award(計算言語学協会 生涯功労賞)を受賞しました。現在は、ハーバード大学John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences(ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学・応用科学スクール)の名誉Higgins自然科学教授を務めています。

Martha E. Pollack

Martha E. Pollackは、コーネル大学の学長やIBMの取締役を就任するずっと以前から、SRIで先進的な研究者としてキャリアを築いていました。

Pollackは1985年に、ペンシルベニア大学で博士号を取得する過程でBarbara Gros(前述)と緊密に研究を行った後、SRIのAI Centerに加わりました。

SRIに入社後、Pollackは多くの論文を発表し、自然言語処理やエージェントシステムにおけるプランニングなどの分野でAI Centerが非常に影響力のある研究拠点となるにつれ、SRIの革新的な思考に対する評価をさらに高めていきました。彼女は、リソース制約型エージェント、リソース制約型実践的推論、意味論的・語用論的解釈、意図理論、エージェントアーキテクチャなど、新たな課題を研究しました。これらは、機械知能をよりよく理解し、どのようにモデル化できるかという重要な問いを提起するものでした。1991年、PollackはSRIでの研究により、人工知能分野の若手研究者にとって最も権威ある賞の1つであるIJCAI Computers and Thought Awardを受賞しました。

自身の研究貢献に加え、PollackはAI研究コミュニティ全体の育成・発展においても重要なリーダーシップを発揮してきました。彼女はAssociation for the Advancement of Artificial Intelligence(人工知能振興協会)の会長を務め、「Journal of Artificial Intelligence Research」の編集長も経験しています。また、Association for the Advancement of Artificial Intelligenceのフェローでもあります。人工知能が有望な学術研究テーマから世紀を象徴する商業技術へと成熟していく中で、彼女は今日の世界を形作る指導的な存在の一人となっています。

過去を称え、未来を見据える

Feinler、Wolf、Grosz、Pollackの貢献は、コンピュータサイエンスの歴史を支える重要な揺るぎない柱となっています。インターネットのアーキテクチャ、最初のAI推論ロボット、自然言語処理の基盤、現代のAIエージェントの理論―これらはすべて彼女たちの遺産です。SRIは創立80周年を迎え、私たちはその遺産を意識的に未来へ受け継ぎ、女性がテクノロジーの未来を形作る研究プログラムを主導する文化を維持するよう努めています。

SRIがどのようにしてコンピューティング通信の姿を変え、そしてAIの未来を切り開き続けているのか、詳しくはこちらをご覧ください。


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