自律型ドローンの可能性を最大限に引き出す

A drone hovering above a field
A drone hovering above a field

Entropy RoboticsはSRIのナビゲーション技術を活用して、防衛、家畜管理、災害復旧など幅広い分野で活用できる安全かつ堅牢な自律型プラットフォームの開発を目指す


Entropy Roboticsの創業者兼CEOであるChris Lemuel氏は、ロボティクスの未来について、ロボット(特に無人航空機)は汎用的なツールとなり、多種多様な周辺センサーデバイスや様々な付加機器(アドオン)を取り付けてカスタマイズしていくことになるだろうという見解を示しています。

「今や、どんなドローンでもスマートな検知プラットフォームに転換することができます。これらはニッチな用途に特化したドローンを最初から開発するよりも、はるかに費用対効果に優れています」とLemuel氏は指摘しています。

Entropy社の目標は、家畜の頭数を数えることから熱画像による点検、そして橋梁のメンテナンスに至るまで、これまで非常に複雑であったりコストが高すぎたりという理由で導入が難しかった産業用途に自律型のロボットソリューションを提供することです。

このビジョンを実現するには、ハードウェアだけでは不十分です。Entropy社は、エッジAIを活用して自律動作ができるソフトウェアスタックを構築することで、自律プラットフォームの費用対効果を劇的に改善することを目指しています。そして、産業界で自律型ドローンの活用を「監視」の分野で拡大するにあたり、極めて重要だと考えているのがSRIからライセンス供与を受けた視覚ナビゲーションスイート(visual navigation suite)であり、これがEntropy社の差別化要因の1つでもあります。

Entropy Roboticsの誕生

Entropy Roboticsを設立する前、Lemuel氏は米陸軍に在籍した後、金融業界で10年にわたって電子取引に携わっていました。その時、陸軍時代の友人との会話に引きつけられるものがありました。陸軍はGPSが利用できない場所でのドローンの飛行能力を向上させていましたが、そのソリューションは高価かつ膨大な計算処理を必要とするものでした。

Lemuel氏は、金融業界における「目的に応じた自動化」がもたらした影響を目の当たりにしていました。そこで、ドローンに対しても同じように目的に応じたアプローチを採用すればよいのでは、という好機を見出したのです。問題となる領域を調査した結果、コンピュータービジョンを活用してナビゲーションを補助する低消費電力のソリューションという1つの分野に焦点を絞りました。この分野の研究は有望であり、ある友人の勧めでSRIに相談したところ、GPSにアクセスできなくても自律プラットフォームでナビゲーションできる視覚慣性航法技術(Visual-Inertial Navigation Technology)という、まさに求めていたものを見つけることができたのです。

「GPSが故障した場合でも安全に航行できなければなりません。また、緊急着陸を余儀なくされた場合にも、安全に着陸できなければなりません」―Chris Lemuel

不可能なのです。峡谷のような複雑な地形ではGPSの信号が弱くなってしまうことがあります。また、軍用プラットフォームでは、意図的な妨害電波(jamming)によりGPSが全く利用できない環境下でも作動できなければなりません。

Lemuel氏は次のように述べています。「軍事分野では、オペレーターとの通信が途絶えたり、自律モードの飛行を強いられたりする際に、ドローンが墜落するような事態は誰しも避けたいものです。民間でも同様のリスクがあります。もしドローンが故障して、人の集まっている公共の場所に墜落したらどうなるのでしょう。人が集中する場所での自律型ドローンの運用を容認するには、ソフトウェアとハードウェア、そして通信の不具合が発生しても、ドローンが確実に、かつ安全に着陸できることを規制当局が確認する必要があるのです。」制御不良のドローンが緊急時にうまく対応できない事例はすでに発生していることから、Lemuel氏はFAA(米連邦航空局)が最終的にはすべての無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicles)に自律着陸機能を義務付けるのではないかと予想しています。

UAVに安全性と耐障害性を組み込むにあたり、SRIは独自かつ極めて効率的なものとして、Center for Vision Technologiesのチームが開発した低コストで計算負荷も低い、視覚をベースとしたナビゲーションのアプローチをEntropy Roboticsに提供しました。このソフトウェアのアプローチは、近年ますます軽量化が進んでいるドローン搭載カメラからの視覚データと慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)を融合させて、他に類を見ない高精度な計測と正確なナビゲーションを実現するものです。

「GPSが機能しなくなっても安全に航行できなければなりません。また、緊急着陸を余儀なくされた場合でも、安全に着陸できなければなりません」とLemuel氏は述べています。

より多くの場所で、より多くのドローンを

SRIの視覚慣性航法機能と、効率的なエッジコンピューティング、そしてコスト効率の高いセンサーシステムを組み合わせることで、Entropy RoboticsはUAVの新たな用途を切り拓こうとしています。数ある進歩の中の一つとして、Entropy社は事前学習済みのAIモデルを、クラウドベースのコンピューティングクラスタからエッジ(端末)へシームレスに移植できる手法を開発しました。これにより、遠隔地やネットワークに接続していない環境下でも、UAVの本体上でより効果的なコンピューティングができるようになるのです。

Lemuel氏は、この技術の価値を的確に示す事例の1つとして、家畜の頭数確認をあげています。

Lemuel氏は次のように述べています。「牧場で本当に探しているのは、群れから離れて横になってしまっている、病気の兆しがある牛です。10万エーカーの牧場なら、午前中に数時間を費やすことになります。他の家畜への影響への懸念や地形が険しいという理由で、時速5マイル(約8km)しか移動できないこともあります。ちなみに、米国における牧場主の平均年齢は約61歳です」

このように、UAVを活用したモニタリングは、牧場主の時間と費用を削減するだけでなく、身体的な負担も軽減できる可能性があります。

Lemuel氏はさらに、自然災害後の点検確認も、自律型ソリューションの展開が期待される有望な分野の1つだと付け加えました。復興に関する支援金は、多くの場合、被害状況の迅速な評価にかかっており、支援金には限りがあることが常です。最近のある調査によると、ノースカロライナ州西部を襲ったハリケーン「Helene」の後には、所得が高い世帯ほど住宅に関する支援を多く受け取る傾向がありました。遠隔地や低所得地域では、データ収集が困難であることが常態化しています。UAVを活用して確認すれば、復興に関する支援金などの資源を初日から公平に、かつ戦略的に配分することができるようになるだろうと期待されます。

「もし町や郡が、災害前後の航空写真による分析データを利用できれば、米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)や州当局に提出できる地図を即座に作成し、『以前は100戸あった住宅が、現在80戸しか残っていない』と報告できるでしょう」とLemuel氏は述べています。

Entropy社が牧畜や災害対策以外の分野で参入機会を見出しているのは、インフラの状態を監視して排出規制を遵守しなければならない電気・ガス業界であり、オンボードコンピューティングを活用してセンサースイートを駆動しようとしています。

用途に関わらず、Lemuel氏は次のように指摘しています。Entropy社が核心として伝えたいメッセージは、接続状態に関係なくドローン自体に情報を効率的に処理する手段さえあれば、現場でのカスタマイズは無限の可能性が開かれているということです。

「その段階になると、すでに開発済みのものを応用するだけです。つまり、最も費用対効果が高く信頼性の高いハードウェアを見つけ、光学式であれ熱感知式であれ、あるいは別の方式であれ、必要な周辺機器を動作させるのに十分な処理能力を確保するのです」とLemuel氏は述べています。

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