
SRIの研究者たちがNASAの紫外線探査機望遠鏡に使用する次世代の宇宙イメージャーの設計と製造を支援
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、全天にわたる紫外線を調査して、星や銀河の進化に関する新たな知見を得るというミッションを担った宇宙望遠鏡を2030年に打ち上げる計画をしています。そして現在、このNASAの紫外線探査機(Ultraviolet Explorer:UVEX)が詳細な空の紫外線地図を作成するときに使用するイメージャーをSRIのエンジニアが設計しており、その後は製造にもかかわります。
SRIのアドバンスド・イメージング・センター(Center for Advanced Imaging)でディレクターを務めるDavid Kellerは次のように述べています。「私たちが専門としているのは、宇宙探査に使用するオーダーメイドのカメラです。UVEX用のイメージャーは、すでに実証されているテクノロジーの次世代を代表するものであり、宇宙についてより多くのことを理解する一助となるでしょう」
紫外線望遠鏡を星のもとへ導く
SRIがUVEXに提供しているのは、フォーカルプレーンモジュール(FPM: Focal Plane Modules)2台に使用するイメージャーで、相補型金属酸化膜半導体(CMOS: Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージャーを配列して構成されています。これは、2013年に任務を終えたNASAの先代紫外線望遠鏡の50倍を超える感度で紫外線の様子を調査するという貴重な機会を提供してくれるものなのです。
片方のイメージャーは、近紫外線(波長が長く可視光に近い)を捉えるように調整され、もう一方は、遠紫外線(より波長が短く、よりエネルギーの高い)を捉えるよう調整します。さらに、UVEXは同じようなカメラで分光器からの光をとらえますが、この分光器は、ひとつの銀河からの光をカメラ全体に分散させるものです。これらのイメージャーを合わせて全天の調査を実施し、宇宙における紫外線の痕跡をマッピングします。
研究者たちは、比較的近い距離にある銀河で最初の星が形成されつつある様子や、紫外線の「閃光」を夜空に放つ爆発的な現象を解明できるのではないかと期待を寄せています。
「私たちが専門としているのは、宇宙探査に使用するオーダーメイドのカメラです」―David Keller
この調査モードの他にも、UVEXはその向きを変えて、新たに発見された紫外線の発生源を調査することもできます。これは、科学者たちが超新星爆発など過渡期の現象についてより詳しく理解するのに役立つのではないかと考えられます。超新星が誕生して間もないころに発する紫外線のスペクトラムは、科学者たちが爆発している星の化学的な組成を理解する手掛かりになるのです。
宇宙空間に耐えうるテクノロジーを創造する
UVEXの各フォーカルプレーン(焦点面)には、光を感知するピクセルを4096×4096の配列で並べたSRIのイメージングチップが9個搭載されます。そしてNASAのジェット推進研究所(JPL)に所属する共同研究者は、近紫外線と遠紫外線のある特定波長を処理するのに役立つ、特殊なコーティングをチップに施します。
「このチップは集積回路を搭載したコンピューターチップのようなものではありますが、光の光子を受け取って電気エネルギーに変換し、そこから画像を生成します。これは、デジタル一眼レフカメラに搭載されているものの高級版のようなものです」とKellerは述べています。
チップが製造できたら、SRIはこれらをオーダーメイドのパッケージで組み立て、宇宙の猛暑や極寒、真空状態、そして放射線に耐えられることを確認するために、大規模な試験を実施します。イメージャーがすべての試験に合格すると、UVEXで使用できるよう、カリフォルニア工科大学(Caltech)やNASAの担当者に受け渡されます。
後の世代のために歴史をつくる
SRIが開発した、以前のバージョンのCMOSイメージャーは、NASAの太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブと欧州宇宙機関(ESA)の探査機ソーラーオービターに搭載されており、太陽を周回して太陽コロナに関するデータを収集して、太陽が関係する気象現象の理解や予報に役立っています。SRIはまた、2024年10月に打ち上げが成功したNASAのエウロパ・クリッパー・ミッションにもCMOSイメージャーを供給しています。
この探査機が木星の付近に到達するには6年かかりますが、到達したら、木星の衛星であるエウロパのほぼ全表面をSRIのイメージャーで調査し、従来のものよりもかなり詳細な地図を作成します。
「我々が構築している技術は、科学の深層や宇宙探査の知識を広げてくれるとともに、まだ完全には理解されていない地球や宇宙の天気に関する情報を提供するのに役立っていると思います」とKellerは述べています。