女性の健康のリズムを捉える

Illustration of a woman with a clock
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月経周期は女性に多大な生物学的影響を及ぼしており、SRIの新たな研究はこのパターンをより深く理解することで世界中の女性の医療を改善できるのではないかという問いを投げかけている


月経周期の生物学的機能における意味は、妊娠を可能にすることです。しかし、健康に影響を及ぼすという観点でみれば、妊娠は月経周期のほんの一部に過ぎません。研究者たちが月経周期を研究するにつれ、この力強い生物学的リズムが全人類の半数の健康にどれほど深く影響を及ぼしているのかが明らかになってきています。

「月経周期が健康に及ぼす重要性を理解するには、別の種類の生物学的周期である『概日リズム』に関する知見を参考にすることができます」と、SRIのCenter for Health SciencesおよびHuman Sleep Research Programを統括するFiona Bakerは述べています。Bakerによれば、私たちの体には24時間周期、すなわち1日周期のリズムで変動することが数多くあります。1日周期のパターン変化として測定可能なものは体温や心拍数、睡眠と目覚め、免疫反応などがあげられ、この他にも多くあるのです。痛みの感受性や体力といった要素は時間帯に左右されますし、また、まったく同じ食べ物を異なる時間帯に摂取すると健康に及ぼす影響が異なる可能性があることは、すでに知られています。

では、月経周期をより正確に理解すると、女性の健康に対するアプローチに影響を与える可能性があるのでしょうか。最近の研究によると、日々の健康管理や新しい医療技術は、月経周期に伴う周期的な変化に注目すると大きな利点があるのではないかということが示唆されています。

月経周期は女性の健康にいかに影響を及ぼしているのだろうか

エストロゲンやプロゲステロン(progesterone)、LH、FSH、インヒビンB(inhibin B)など、多くのホルモン(血液中を循環する分子メッセンジャー)は月経のパターンに応じて変化します。そして、月経周期をつかさどるこれらのホルモンは血液中に放出されることから、生殖器系だけでなく全身に作用を及ぼす可能性があります。例えば、エストロゲン受容体は体内の至る所に存在しているのですが、これは人体のほぼすべての細胞がエストロゲンの変動に感受性がある(よって、反応する)ということを意味しています。

「月経周期が健康に及ぼす重要性を理解するには、別の種類の生物学的周期である『概日リズム(circadian rhythms)』に関する知見を参考にすることができます」— Fiona Baker

SRIのFiona Baker博士が執筆した総説によると、体温にも月経リズムが見られ、月経周期を通じて0.3~0.7℃の変動があります。体温はあらゆる分子の反応に影響を与えることから、身体の最も重要な物理化学的特性の一つです。したがって、体温の変化は、私たちの活動や環境の変化以上に、代謝に影響を与えている可能性があります。

最新研究:月経周期が心臓や体温、そして睡眠に与える影響

akerと共著者たちは、カリフォルニア大学アーバイン校およびSRIのメンローパークキャンパスで実施した米国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)の資金援助を受けた月経パターンに関する研究について、ある重要な論文を発表しています。実験室のデータや不定期なサンプリングに依存していた多くの先行研究とは対照的に、この研究では遠隔医療デバイス(Ouraリング)を用いて、参加者の指で体温、心拍数、睡眠をリアルタイムかつ継続的に追跡しました。

この研究結果は、心拍数と体温において、他の研究手法で示されている結果と一致しており、月経周期は体温と心拍数の両方に影響を及ぼしているのは確かであると考えられます。さらに、この研究では、月経周期全体にわたる体温の変動が、1日の体温の変化をコサイン法でモデル化したときに得られる曲線と同じような波動モデルで表せることが実証されました。このようにモデル化することで、個人ごとにばらつきのある月経に伴う体温のリズムを比較できますし、このリズムを健康指標としてどのように活用できるかを検討できるようになります。

研究者たちはまた、月経周期が睡眠に影響を与えているかどうかについても関心を寄せていました。一般的に、睡眠は体温の影響を受けやすく、睡眠を制御する脳の領域には月経ホルモンの受容体が存在しています。実験室で行われた睡眠に関するいくつかの研究において、月経周期の後半(黄体期)において、急速眼球運動睡眠(レム睡眠、逆説睡眠とも呼ばれる)が減少することが以前から示唆されています。また、周期後半での睡眠中の脳活動には特定の変化が見られ、記憶の定着に重要な役割を果たす睡眠紡錘波という特定の種類の脳活動が短時間にまとまって発生する現象が増加することが研究で明らかになっています。

SRIとカリフォルニア大学アーバイン校によるこの研究では、月経周期を通じて体温と心拍数に顕著な変化が確認された一方、睡眠時間、覚醒の回数とその持続時間、そして入眠にかかる時間には、月経周期を通じて変化がなかったことが示されました。Bakerは次のように述べています。「私たちの論文では、月経周期が睡眠に及ぼす影響を能動的に相殺している、もしくは緩和している生物学的なメカニズムが存在しており、睡眠のような重要な活動は月経周期の生理的変化にかかわらず一貫して調節されるようになっているのではないか、という仮説を立てたのです」

しかし、Bakerは、月経周期の睡眠に及ぼす影響がすべての人にとって同じであるとは限らない、ということを研究者(および医療従事者)は今後念頭に置くべきであるという注意を促しています。例えば、個人間の重要な違いが示されている他の研究もあり、特に気分の変動や月経痛を伴う場合、月経前後に睡眠の質が低下する月経パターンになる人がいることも分かっているのです。

月経周期と健康との関連性に関する研究の今後

今後の研究では、月経周期が睡眠や健康、またパフォーマンスに関する様々な指標に及ぼす影響を明らかにするとともに、女性の健康をさらに向上させるべく、潜在的なメカニズムを特定していくことになります。「この目的に向けて、月経周期と健康への影響に関する調査を進めていくにあたり、私の研究室では最近2つの具体的な研究ツールを開発しました」とBakerは述べています。1つ目のツールとして、その有用性を示した論文において、体温を測定する市販のウェアラブルデバイスを活用してある周期に排卵があったかどうか特定するとともに、周期間の比較や個人間の比較ができるように月経周期の特徴を抽出する方法を示しています。2つ目のツールとして、別の方法論に関する論文では、周期の長さが異なる月経周期を研究者や医療従事者が比較したり、ある特定の月経期間(例えば、治療を開始したとき)をターゲットとした介入を行ったり、周期全体にわたる健康パラメータの変動を可視化したりするときに、SRIが開発したアルゴリズムが使えるのではないかという可能性について解説しています。

月経周期は科学の世界において長らく軽視され、また、社会的にはタブー視されてきましたが、女性の健康に関する理解を深めるにあたり大きな可能性を秘めています。繊細な月経周期の特性に焦点をあてた新たな研究は、真に個別化された月経に関する医療への道を切り拓きつつあります。

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