子どもたちが人気番組から理系に関する知識や実践を学べることを示した新しい研究結果

Child watching tablet at breakfast
Young boy watching a tablet at breakfast

スクリーンベースの教育コンテンツが身の回りの世界に対する幼児の理解を深めるのに役立つことがSRIの研究により数値で示された


多くの親たちが近年、子どもたちが電子機器を使用する時間、いわゆるスクリーンタイムについて不安を抱いています。子どもたちのスクリーンタイムが長過ぎるのではないか。子どもたちに何を、どのくらい見せるのが一番よいのだろうか。そして、スクリーンタイムは子どもたちに何か「良いこと」があるのだろうか、と心配しているのです。

SRIのEducation DivisionでCenter for Learning and Developmentのディレクターを務めるTodd Grindalは、このような親たちの疑問が研究の大きな原動力となっています。「私たちは、メディアやテクノロジーが子どもたちの支えとなることができる方法を探り、そして、あまり役に立たないような場合も調べています」とGrindalは説明します。

最近の論文で、Grindalと共著者(SRI、および米国の教育関連NPOであるEducation Development Centerに所属)は、デジタルコンテンツには子どもたちにポジティブな影響を与える可能性があることを示す研究を発表しました。学習成果を促進するよう特別に設計されたコンテンツを幼児に見せると、重要スキルが測定可能なレベルで向上することが分かりました。

「この研究が示しているのは、適切に設計され、発達段階に適した子ども向けのメディアは有用であり、子どもたちの学習に役立つということです」―Todd Grindal

米国教育省のReady To Learnプログラムの資金援助を受けたこの研究では、アメリカの放送サービスPBS KIDSのシリーズ番組であるThe Cat in the Hat Knows a Lot About That!のシーズン3の放送回を見たり、デジタルゲームで遊んだりすることで、子どもたちが何を学べるのかを調査しました。この番組は、米国国立科学財団(NSF: National Science Foundation)が設定した年齢に応じた基準に沿うように設計されており、物理科学やエンジニアリングの概念から実践、そして語彙を集中的に取り入れるようにしています。

「子どもたちはこの番組が大好きです。だからこそ、子どもたちに科学とエンジニアリングのスキルを学んでほしいと切に願っていた米国公共放送機構(CPB: Corporation for Public Broadcasting)とPBS KIDSの関係者は、私たちに面談を基本とした大規模な調査を依頼しました。その結果はどうでしたか?子どもたちはコンテンツをただ見ただけではなく、この仮想空間で番組を見たり、タブレットで科学やエンジニアリングに関係しているゲームをしたりする中で、何かを学ぶことができるでしょうか?そして、その学んだ何かを現実の世界に生かすことはできるでしょうか?」とGrindalは問いかけます。

動画やゲームの潜在的な影響を調査するため、研究チームは全米の450人を超える4~5歳児 の両親との面談を実施しました。この面談時にはまた、すべての子どもに科学に関するスキルの評価も実施しました。研究者たちは各家族にタブレット(Cat in the Hatのコンテンツがあらかじめ入っているものか、またはこコンテンツがブロックされているタブレットのどちらか)を渡し、Cat in the Hatのコンテンツ(ブロックされているグループには他の教育関連メディア)を週に90分以上、8週間にわたり視聴するよう依頼しました。

その後、研究チームは各家族と再度面談を実施し、子どもたちに科学とエンジニアリングに関連する一連の課題を示しました。その結果はどうだったでしょうか。この論文によると、「物体の特性(大きさや形など)や材料(硬さや柔らかさ)が、様々な目的に対してどのように適しているか、また、異なる方向の力(押す力や引く力)がどのように物体を動かすことができ、橋の安定性にどのように影響するかについて、Cat in the Hatの番組にアクセスできた子どもたちは、この番組にアクセスできなかった子どもたちよりも良好なパフォーマンスを示す数値が得られた」とのことです。

言い換えると、デジタルコンテンツは、子どもたちの科学に関する知識においても、科学やエンジニアリングの実践においても、いくつかの面で、数値で示せるほど向上させることができたのです。

「私たちは、子どもたちの学びではなく、子どもたちの注目を集めてマネタイズすることに重点を置いたコンテンツに囲まれています。この研究が示しているのは、適切に設計され、発達段階に適した子ども向けのメディアは有用であり、子どもたちの学習に役立つということです。さらに良いことに、この肯定的な結果は、PBS KIDSメディアがReady to Learnの資金援助を受けて、先行実施した大規模ランダム化比較試験と一致しています」とGrindalは指摘しています。

本資料は、米国公共放送機構(Corporation for Public Broadcasting)およびEducation Development Center, Inc.のCorporative Agreement No.U295A150003、CFDA No.84.295Aに従い、米国教育省の支援を受けた研究に基づいています。本資料で表明された意見、調査結果、結論、提言はすべて著者に帰属するものであり、Education Development Center、米国公共放送機構、米国教育省の見解を必ずしも反映するものではありません。

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