日本のイノベーションを牽引する


人々や言語、文化に対する思いを活かして人間関係を築き、変化を促す


ビジネスコンサルタントであり教育者でもある岩筋彩は、国境を越えたビジネス上のパートナーシップを構築する上で起きる課題を理解しています。彼女は野村SRIイノベーション・センター(NSIC)のアソシエイト・ディレクターとして、コミュニケーションの才能と文化の多様性に関する深い理解を生かしつつ、日本企業がシリコンバレーの文化を受け入れ、そのイノベーション戦略を拡大できるよう支援しています。

このブログでは、「言語」に対する自身の熱い想い、そしてSRIのビジネスやテクノロジーのリソースをいかに活用して、より多くの人々に利益をもたらすパートナーシップを構築しているのかについて語っています。

私がSRIに入社したのは、困難を乗り越えて適応していく個人の成長や、問題に直面して戦術や考え方、文化を変えなければならない企業の成長に常に魅了されていたからです。

やはり最終的に重要となるのは「人」です。テクノロジーはイノベーションを可能にしてくれる大事なツールですが、変化を生み出すには常に確かな人材とチームが必要です。野村SRIイノベーション・センターでは、まさにそのような進化に携わることができます。私の主な役割は、現地にいるメンバー企業の方々と協力したり、サポートしたりすることであり、また同時に各企業の日本の本社にいる人々との関係を築くことでもあります。

この仕事にたどり着くまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。日本の大学で国際関係の学位を取得した後、日本語を教えることに興味を抱き、生まれ育った北海道で国際的なビジネスのプロフェッショナルを対象とした小さなスクールを開きました。この時、生徒たちが言語だけでなく、新しい文化や生活の中で言語以外のコミュニケーション面で苦労しているのを目の当たりにし、生徒たちの為により良い教師になるには私も同じような体験をする必要があると思ったのです。

日本とシリコンバレーの文化の架け橋に

渡米してサンフランシスコ州立大学で言語学の修士号を取得することを決めたのは、言語についてもっと学び、新しい文化と言語に触れ、少しでもバージョンアップした自分になって日本に帰りたいという考えからでした。まさか日本以外の国に住むことになるとは思ってもいませんでしたし、英語の勉強に関連した職業に就くことになるともまったく思っていませんでした。

2009年に修士号を取得した後、最初は留学生やインターンをサポートする小さなエージェンシーで働きました。そしてこれがきっかけとなり、日本をグローバル・コミュニティの一部として考えるようになりました。

そこで、日本の国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)シリコンバレーに転職し、アメリカのスタートアップ企業や研究機関、大学と関わりたいと考えている日本の企業と一緒に働きました。そこで初めてテクノロジーとイノベーションに触れ、この仕事とこれまで行ってきた語学に関する仕事との間に重なるものを感じました。企業では、エンジニアたちが自分たちの言語を話し、間接部門も自分たちの言語を、経営陣もまた第3の言語を話すことが多く、このような言語的、また文化的な相違が、グループ間の意思疎通を図るのを困難にしており、多くの摩擦を引き起こしていることを目の当たりにしたのです。

2020年の後半に、SRIのある友人とコーヒーを飲んでいたのですが、この友人がSRIの中に日本企業のためのイノベーションセンターがあるという話をし、これに関わることに興味はないかと尋ねてきました。

SRIがテクノロジー関連で大変優れた資産を有しており、使命感の非常に高い組織であることは知っていましたが、本当に素晴らしい機関だと確信したのは、SRIで話をした全員が、自分たちの仕事に情熱を持っていたことです。

SRIでイノベーションを実現する

私は現在、センターの運営を管理しており、新規事業やイノベーションのイニシアチブを創出して組織を成長させることを目指しているメンバー企業と協力しています。メンバー企業の現地にいる社員、現地を支援する部門、そして各企業の経営幹部と同時にコミュニケーションを取ることで、組織内の各関係者の橋渡しをするとともに、企業が直面する課題を客観的に理解し、NSICの支援が及ぼすインパクトが最も大きくなる分野を見極めています。

現地に滞在している間に、その場にいる参加者たちのビジネスマインドや考え方が変わっていくのを観るのはとても興味深く、私が最も達成感を感じる瞬間のひとつでもあります。

私のキャリアは、英語を話す人たちに日本語を教え、日本語を話す人たちに英語を教えることから始まりましたが、今では学際的なコミュニケーションの分野へと広がっており、日本とシリコンバレーを行き来する人やアイデアの架け橋となるべく、個人や企業の能力を最大限に引き出す仕事をしています。私たちは限界に挑戦しています。そして、それがこの仕事の醍醐味です。


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