
自閉症療法における望ましい転帰とは何か、どうすればそうした転帰を実現できるのかについて理解を深めることを目指す
米疾病予防管理センターの最新データによると、8歳児における自閉スペクトラム症(ASD)の有病率は、現在およそ31人に1人です。しかし、これほど広く見られるにもかかわらず、ASDと診断された子どもを支えようとする家族の多くは、今なお複雑さや不確実性に直面しているのが実情です。
問題の一因は、ASD自体が極めて幅広い診断名であることです。これに、多数の治療法の存在や、国・州・医療機関ごとに異なる寄せ集め状態の対応が相まって、何が効果的でその理由は何なのかについて幅広い合意を得ることが非常に難しくなっているのです。
こうした自閉症を取り巻く情報の空白を埋めるために米国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)が立ち上げたのが、自閉症データサイエンス・イニシアチブ(ADSI: Autism Data Science Initiative)です。総額5000万ドルに上るこの新しいプロジェクトは、政府機関や医療制度が抱える膨大な自閉症関連のデータを掘り下げ、そこから学びを得ることを目的としています。
SRIは、オレゴン健康科学大学(OHSU: Oregon Health & Science University)を拠点とするこのプロジェクトを共同で主導し、膨大なデータを自閉症の方々へのサービス提供のあり方に影響を与え得る明確な知見へと変える上で、重要な役割を果たすことになります。
自閉症に関するデータを新たな知見へ
ADSIプロジェクトでは、自閉症の幼児や子どもが最適・次善の転帰を得る可能性を、保険加入状況、居住地、サービス利用、併存疾患といった客観的要素に基づいて予測できるよう、データ駆動型の枠組み構築を目指しています。最終的には自閉症の質指数(AQI: Autism Quality Index)によって、将来の研究への指針を提供するとともに、自閉症領域全般で特定の転帰を改善できるよう州政府や医療制度を支援することが期待されます。
SRIはこうした使命を果たすため、州の早期介入制度や特別支援教育制度に関する豊富な経験を生かし、州・地方制度レベルの変数を特定します。さらに、参加各州から得た早期介入データのクレンジング・管理も担当し、これらのデータを低所得層向け公的医療保険「メディケイド(Medicaid)」の請求データ、全米子ども健康調査、米国国勢調査局、子ども機会指数(COI: Child Opportunity Index)3.0、各州保健・教育制度等の情報源のデータと統合します。その後、SRIが提供するこのクリーンで高品質なデータを基に、OHSUと北アリゾナ大学(本プロジェクトのパートナー: Northern Arizona University)の生物統計学者などの共同研究者が機械学習をはじめとする技術を適用し、療法の転帰を信頼性高く予測できるAQIを構築するのです。
「SRIは、この取り組みから最も大きな影響を受ける当事者の方々が、解決策の設計や実装に関わることが極めて重要だと確信しています。ですから、本プロジェクトを通じて自閉症の方々やそのご家族にお集まりいただき、自閉症のコミュニティーにとって重要な転帰とは何かを共に特定していけることを大変嬉しく思っています」— Margaret Gillis
本プロジェクトにおけるSRIの取り組みは、教育や公衆衛生に関するデータから知見を引き出してきた自身の豊富な経験を生かすものとなります。例えばSRIが運営するデイジーセンター(DaSy Center)は、障害のある幼児とその家族にとって成果向上につながる高品質なデータシステムを各州が構築する際の支援において、今や全米で認められた中核的存在となっています。本プロジェクトにおける取り組みではそれに加え、NIHの助成を受けるASCENDとASD3という2つの別のプロジェクトを通じて収集されたデータと知見も活用していきます。
「大事なのは、最も重要なデータがどこにあるのかを把握するだけでなく、最も関連性が高いデータは何かということも理解し、そのデータを適切に扱うことです」と、SRI教育部門のPrincipal Researcherであり本プロジェクトの主任研究員でもあるMargaret Gillisは説明します。「SRIのチームには、かつて州政府機関で働きデータ共有やデータ利用契約に関して豊富な経験を持つ専門家が複数在籍しており、こうしたプロセスを迅速に進める上で役立ちます。また、州ごとに見いだし得る変数については、その微妙な違いを理解することも重要です。さらに、セキュリティの点もあります。SRIは機密性の高い政府のデータを扱ってきた経験があるため、州や連邦政府の関係者から、この種のプロジェクトで求められる最高水準のデータセキュリティ対策を維持できるものと信頼されているのです」
インパクトを生み出すための協働的アプローチ
Gillisが強調するように、本プロジェクトには転帰の予測に加え、それと同じくらい重要なもう1つの側面があります。それは、自閉症コミュニティーに直接参加していただき、何が最適な転帰と見なされるのかについて、SRI側の理解を深めることです。
「今回の取り組みにおける優れた点の1つは、こうしたプロジェクトに自閉症の方々が関わる必要性を認識していることです」と、Gillisは付言します。「SRI教育部門では、この取り組みから最も大きな影響を受ける当事者の方々が、解決策の設計や実装に関わることが極めて重要だと確信しています。ですから、本プロジェクトを通じて自閉症の方々やそのご家族にお集まりいただき、自閉症のコミュニティーにとって重要な転帰とは何かを共に特定していけることを楽しみにしています。そしてプロジェクトの最後には、関係者の方々に再度お集まりいただき、本研究の政策提言やその他の長期的な影響について検討し、共に考えていく予定です」


