AIは生徒のデータリテラシー向上にどう貢献できるのか


SRIの教育分野とAIの専門家が連携し、データ主導の世界で生徒が活躍できるよう支援


過去10年間で、NAEP(全米学力調査)の数学試験におけるデータ分析と統計の得点は、4年生で10点、8年生で17点低下しました。この結果は、将来のさまざまな機会を得るために高度なデータ活用能力が求められる世界で、米国の生徒たちが遅れを取るリスクに直面していることを示しています。

米国において、生徒のデータリテラシーを向上させる必要性が高まる中、SRIの教育研究者たちは、AIを活用して、生徒一人ひとりに合わせた、誰もが利用しやすいデータ探索の機会を提供する方法を検討し始めました。SRIが社内資金で進める研究開発プロジェクト「Safe and Accessible Data Interactions in Education(SADIE)」では、生徒がデータを探索する際に直面する障壁を乗り越えられるよう支援する、AIを活用したソリューションの開発を進めています。

「このソリューションは、SRIならではの強みを体現しています。それは、SRIの教育部門の研究者が持つ深い専門知識と、技術のラボが有する最先端のAIフレームワークを融合できることです」— Jennifer Nakamura

SRIのPrincipal Education Researcherであり、SADIEプロジェクトの共同主任研究者(Co-Principal Investigator) を務めるShari Dubosは、次のように述べています。

「当初、私たちは会話型AIを活用して、障害のある生徒を支援する方法に重点を置いていました。しかし最終的に、すべての生徒にとってデータリテラシーを向上させるツールが必要だと気づきました。そこで私たちは、障害のある生徒を含むすべての生徒が、データリテラシーに重点を置いた教育テクノロジー(EdTech)製品をより利用しやすくするための機能を開発しています。これにより、データが多用される教材にも、より深く取り組めるようになるでしょう。」

現在のEdTechに対応するシステムの構築

Dubosによると、EdTech企業はこのデータリテラシーの格差を認識しており、その解消に向けて、生成AI(GenAI)を中核に据えた新しい製品を急速に展開しています。

「SRIが大きな役割を果たせるのは、安全性と信頼性の分野です」とDubosは強調します。「すでに、生成AIを活用したプラットフォームに対して、教師や保護者が不信感を抱くケースが見られます。学校の運営者たちは、データのプライバシーを懸念しています。また、障害のある生徒を支援する現場に携わる人なら誰でも知っていることですが、スクリーンリーダーや音声入力などのアクセシビリティ機能を細かく調整することは、製品開発者にとって必ずしも最優先事項ではありません。だからこそ、AIを活用したデータリテラシーツールを信頼でき、誰もが利用しやすいものにすることができれば、非常に大きな成果となるでしょう」

SADIEチームは、独立した学習アプリを新たに開発するだけでは、最大限の効果を得られないと考えました。そこでSADIEは、大規模言語モデル(LLM: Large Language Models)と、それらを活用する生徒向けEdTech製品の間に位置する「中間レイヤー」として構築されています。

この中間レイヤーは、生徒向けアプリケーションは、堅牢なコンテンツモデレーション、マルチモーダルなデータアクセシビリティ、データプライバシーを確保する役割を担います。コンテンツモデレーションには、例えばLLMの回答をデータリテラシーに関連する安全な内容に制限するとともに、不適切な質問や学習目的から外れた質問を適切な方向へ導くことなどが含まれます。マルチモーダルなデータアクセシビリティについては、データを視覚的に理解(可視化)する必要がある生徒のために、LLMが質の高いグラフを生成できるようにします。また、スクリーンリーダーを利用する生徒が情報を理解できるよう、質の高い代替テキストも生成します。さらに、このシステムは、LLMが機密性の高い生徒のデータや個人を特定できる情報にアクセスすることを防ぎます。

SADIEの共同主任研究者であるJennifer Nakamuraは、次のように述べています。

「このソリューションは、SRIならではの強みを体現しています。それは、SRIの教育部門の研究者が持つ深い専門知識と、技術のラボが有する最先端のAIフレームワークを融合できることです」

「SRIでは、AIが教育において極めて大きなプラスの役割を果たしうると認識しています。最大のリスクは、こうしたシステムが慎重さを欠いた形で導入され、それによって信頼が損なわれてしまうことです。」— Shari Dubos

SRIのSpeech Technology and Research Labが開発した自動音声認識(ASR: Automatic Speech Recognition)ソフトウェアを統合・カスタマイズしたことも、その一例です。これによりSADIEチームは、騒がしい教室環境において、中学生の音声を正確に認識するシステムの能力を大幅に向上させることに成功しました。この新しいモデルは、標準的なASRシステムと同等の性能を維持しながら、モデルの規模が小さく軽量(省リソース)であるため、推論処理の高速化も実現しています。

研究室から教室へ

過去1年間にわたり、SADIEチームは中学生や教師と共同で設計を進め、ユーザーテストを実施してきました。そして、SADIEの中間レイヤーを構成する複数の技術的機能を備えたプロトタイプを完成させました。

今年、研究チームは、データリテラシーの教育においてLLMが生成する回答の正確性と適切性をさらに高めるため、検索拡張生成(RAG: Retrieval-Augmented Generation)を組み込む予定です。また、新たに登場するEdTech製品のニーズに合わせてデータプライバシーの設定を改善するとともに、AIの革新によってすべての生徒の力を引き出せるようなソリューションの実現を目指す商業分野のビジネスパートナーに、システムを紹介する予定です。

Dubosは、次のように締めくくっています。

「SRIでは、AIが教育に非常に大きなプラスの効果をもたらす可能性があると考えています。最大のリスクは、こうしたシステムが慎重さを欠いた形で導入され、信頼が損なわれることです。だからこそ私たちは、保護者、教育関係者、そして何より生徒たちから信頼されるソリューションの提供に強い意欲を持つ、先進的な教育イノベーターに『SADIE』を提供できることを非常に楽しみにしています」

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