
フォトニクス、光学分野、量子技術の限界を押し広げるべく、GentryはSRIの研究に取り組む
SRIの応用物理ラボ(Applied Physics Laboratory)の主任研究員であるCale Gentryは量子通信やフォトニック回路、原子センシングなど、次世代技術の最先端の研究に大半の時間を費やしています。
このミクロの世界において、原子より小さいレベルでも物理的に実在を測定でき、操作できるSRIの能力が、驚くような新たな発見や可能性をもたらしています。
Gentryは今回、自身と所属チームが量子技術やフォトニクス、そしてその関連技術の可能性にどれほど大きな期待を寄せているかについて説明しています。
SRIで所属しているグループは、まさに最先端の技術に取り組んでいますが、ご自身のチームにはどのような専門知識があるのか、まず説明してもらえますか。
私が博士課程で研究した専門分野は集積フォトニクスで、主に量子システムや光学ビームステアリング装置のコンポーネントレベルを対象としていました。SRIで勤務して7年になりますが、私たちはフォトニック集積回路であるか、従来型のファイバーや自由空間素子であるかを問わず、特定の用途に応じたフォトニクス技術を選択できるようにすべく、システムのイノベーションに重点的に取り組んできました。私のチームは、センサーや光通信、マイクロ波の信号処理、量子インターコネクトとネットワークなどの分野で生じる新たな課題に対応できるような、フォトニクスソリューションの開発に注力しています。
「光通信の分野では、消費電力が極めて少ない超小型通信デバイスの開発に大きな注目が集まっています。これは、次世代ドローンや宇宙における安全な通信にとって極めて重要なことなのです」―Cale Gentry
私が率いているチームは、フォトニック集積回路のエンジニアリングから安定したレーザーの開発、そして量子リピーターの研究に至るまで、さまざまなバックグラウンドを有しており、志を同じくする少人数のチームです。
その研究には、具体的にどのような実用的な意義があるのでしょうか。
一見すると、私たちのプロジェクトは少々抽象的に思えるのかもしれません。一例をあげると、機械的な動きを一切使わずに、チップに電気信号を印加するだけで光学ビームを2次元方向に制御する装置があります。このコンパクトなデバイスは幅広い用途に応用可能で、その一つが光通信です。では、なぜそれが重要なのでしょうか。光通信の分野では、消費電力が極めて少ない超小型通信デバイスの開発に大きな注目が集まっています。これは、次世代ドローンや宇宙における安全な通信にとって極めて重要なことなのです。防衛分野への応用は言うまでもありませんが、商用通信技術への応用も期待されています。また、私たちは原子蒸気を相互作用させたり、マイクロメートルサイズのガラス球を浮遊させたりするのに光学ビームを使っています。では、そのようなことをしている意味は何なのでしょうか。じつは、これは超高感度センサーを開発しているのです。
また、レーザー光の発射源を検出するセンサーを開発するという非常に興味深いプロジェクトもあります。これは防衛や民間航空などの分野で幅広く応用できるのではないかと期待されています。航空機へのレーザー光照射は年々増加しており、パイロットの集中力がそがれたり、時には眼などの怪我につながることもあります。現時点では、このようなレーザー光がどこから発射されているのかを特定する手段は全く存在していません。そして、私たちはフォトニック集積回路がこれを解決してくれるのではないかと考えています。
SRIはなぜ、このような最先端の科学・工学を追求するのにふさわしい場所なのでしょうか。
ここで働くことを検討していた際、SRIには1960年代から続く最先端のLiDARシステムに関する専門知識があることを知りました。ですから、ここには魅力的な研究の歴史が間違いなく存在しているのだと確信しました。
また、ここでは、技術成熟度(TRL: Technology Readiness Levels)の低いプログラムを成熟させられるチャンスと、実用的なアプリケーションを構築する機会の両方があるということに、私は大きな期待を抱きました。例えば、現在進行中のプログラムの多くは、米国防高等研究計画局(DARPA: Defense Advanced Research Projects Agency)のマイクロシステム技術室(MTO: Microsystems Technology Office)から資金提供を受けています。このMTOは、私たちの分野において、まさに斬新な研究を推進する先駆者たる機関の一つです。そして、より応用に近い側面もあります。私たちは常に、フォトニック集積回路や光学システムなどの分野で新たに発見されたことを、顧客が活用できるように後押しする機会を追求しています。これは、基礎研究を手掛け、それを具体的なソリューションへと転換するという一連のプロセスそのものです。
SRIが今後数年間で取り組むことについて、どのような点に期待を寄せていますか?
光通信、特にドローンや衛星といった小型プラットフォーム向けのものは、非常に興味深い分野だと思っています。私たちは、この分野における画期的な進歩のいくつかに大きく貢献していくことになるでしょう。
「昨年は量子科学の100周年を迎えましたが、100年経った今でも量子力学的な振る舞いの中で、最も興味深い応用の可能性が解き明かされはじめたばかりだということを思うと、本当に驚くべきことです」—Cale Gentry
また、マイクロ波による通信や処理の分野でも、非常に興味深い研究を進めています。私たちは、光学技術とマイクロ波技術の両方を組み合わせたハイブリッドの通信システムを開発しており、これによって現在の技術水準に比べて桁違いの性能向上を実現しようとしています。
そしてもちろん、量子もあります。量子システムを用いて、コンピューティングやネットワーキング、センシングの分野に革命をもたらすことへの関心は極めて高くなっています。そして、ほぼすべての技術プラットフォームやアプローチでフォトニクス技術が活用されているのですが、これこそがSRIの得意分野なのです。
量子技術の専門家ではない私たちに教えてください。なぜフォトニクスの革新が量子システムにとってそこまで重要なのでしょうか。
すぐに難しくなってしまうのですが、簡単に説明してみましょう。多くの場合、システムの「量子的であること」は、個々の原子やイオンといったものと完全に結びついています。しかし、その粒子の量子的な振る舞いを制御したり、観測したりするには、非量子的な(すなわち昔からある)光ビームを使わなければなりません。これが、原子磁力計やリュードベリ原子センサーのようなデバイスの仕組みです。そして、量子システム用のフォトニクスをベースにしたコンポーネントを製造・小型化する新しい方法に私たちのフォトニクスに関する専門知識を活用することで、新たな機能拡大への道筋を提供できます。
また、光の光子を「飛行する量子ビット」として利用し、量子情報を光速かつ極めて少ないロスで伝送する量子ネットワークもあります。これは、私たちが開発に深く関わっている分野です。
昨年は量子科学の100周年を迎えましたが、100年経った今でも量子力学的な振る舞いの中で、最も興味深い応用の可能性が解き明かされはじめたばかりだということを思うと、本当に驚くべきことです。
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