
医療が在宅での治療へ移行する中、Vaalia HealthはSRIのAI技術を活用して効率的で効果的な医療となるよう取り組む
医療のデジタル化が進むにつれ、医療環境が急速に変化するとともに多くの患者さんにとってより効率的になってきています。一方で、オンラインでの医療従事者とのやり取りに戸惑ってしまい、取り残されてしまう患者さんもいます。このデジタルトランスフォーメーションの恩恵をすべての患者さんに届けるには、改善できることをすべて見出して、医療機関であっても自宅であっても、患者さんの治療成績(患者アウトカム)を確実に良くできるような、人を中心に据えた医療技術を構築しなければならないとVaalia Healthの創業者であるJani Ahonala氏は述べています。
Ahonala氏は、過去に2つのスタートアップを立ち上げた経験豊富なヘルステック起業家です。そして、「因果AI(causal AI)」を活用して医療の個別化に向けた変革に対応するため、Vaalia Healthを設立しました。Vaalia Healthは、SRIのAIイノベーションを基盤とした新たなAI駆動型の医療プラットフォームを構築することで、新しい医療の時代において重要な役割を果たすべく尽力しています。
医療のあり方はどう変わってきているのか
Ahonala氏は次のように述べています。「かつては、がんになると病院で治療を受けていました。病院が命をつなぐ場所だったのです。3週間ごとに通院して点滴を受け、点滴後は体調に問題がないか確認するために経過観察で1時間ほど病院に留まるよう指示されました。その際に、医療チームや看護師、そして他の患者さんたちと顔を合わせることができたので、繋がりを築けていました」
しかし、近年登場した効果のある内服薬の恩恵を受けているがん患者さんにとっては、この体験がかなり異なるものになっているとAhonala氏は説明しています。薬は自宅に郵送されるので、医療チームとのやり取りは主にオンラインや電話で行われます。多くの患者さんにとって、これは良い面もありますが、欠点もあるのです。通院のために長距離を移動する必要がなくなることで仕事や家事の時間を確保できることでしょう。そして、この在宅ケアへの移行はがんという病気に限ったことではなく、医療システム全体に広がる一般的な傾向となりつつあります。
しかし、Ahonala氏は、この新しい(そして確かに効率的な)アプローチの潜在的なデメリットについても冷静に見据えており、「医療チームはこれまで同様、患者さんのサポートに最善を尽くしていますが、患者さんとの関わり方は以前とは変わってきています。医師の診察を3カ月に1度受ける程度では、医療チームと話をする時間は多くありません。そのため、服薬管理の面で患者さん自身がより大きな責任を担う必要があるのです」と述べています。
服薬遵守率の向上におけるAIの役割
Vaalia Healthは、AIを通じて健康状態の改善に貢献できるような点を数多く見出していますが、当面の目標はがん患者さんの服薬遵守率を向上させることです。これは決して小さな問題ではなく、現在、地域のがん診療所からのデータによると、患者さんの実に20~40%が、100日も経過しない間に経口抗がん剤の服用を中止していることが示唆されているのです。
「アルゴリズムは、データが更新されるたびに早期に中断するリスクが高い患者さんを特定するよう、訓練されています。また、Vaalia Healthのアルゴリズムは、その理由やどのような対策が可能かについても説明してくれます」―Jani Ahonala
AIの予測能力が高まっていることを踏まえ、Ahonala氏は医療データに基づいて治療を中断してしまうリスクが非常に高い患者さんを予測し、最も効果的な介入策を特定できるような、AI主導のソリューションが何かしら存在するだろうと思っていました。患者さんを最適な治療の道筋に乗せるための臨床診断を下すにあたり、まず必要なことは、高リスクの患者さんを特定することです。そして、Ahonala氏の知人である起業家が、AIの分野で長年実績を積み重ねてきたSRIに相談するよう勧めました。Ahonala氏はすぐにSRIのCenter for Vision Technologiesに所属するYi YaoとAjay Divakaranにコンタクトを取り、因果AIに関する最新の研究成果について話を聞きました。
「この二人が因果関係に関する研究成果や、因果AIは何ができるかを見せてくれたとき、私は圧倒され本当に驚きました」とAhonala氏は述べています。
NetflixやAirbnbのような消費者向けプラットフォームが、極めて精度の高いおすすめ(hyper-targeted recommendations)を提供できるのは、まさに因果AIのおかげであるとAhonala氏は指摘しています。Vaalia Healthは、SRIの次世代因果AIアプローチを医療分野のユースケースに合わせてカスタマイズして、病院やクリニックがこれまで患者さんに提供してきたのと同レベルの介入精度を実現することを目指しています。
新たな治療のパラダイムを実践する
SRIの研究チームと協力してカスタムAIモデルを入念に構築した後、Vaalia Healthは昨年、乳がんの治療を受けている患者グループを対象に、これらのモデルを実際の現場で導入し始めました。
Ahonala氏は次のように説明しています。「私たちは、患者データがすべて保存されている電子カルテをはじめとした、医療機関のITシステムと接続しています。そのアルゴリズムは、データが更新されるたびに早期中断のリスクが高い患者さんを特定するように訓練されています。また、Vaalia Healthのアルゴリズムは、なぜこの患者さんがそうなのか、そしてどのような対策が可能かを説明することもできます。私たちはこれらの知見を医療チームやコーチに提供して、この情報を基に各自のニーズに合わせたオンラインの服薬コーチングプログラムに患者さんが参加できるようにしてもらいます」
Vaalia Healthはここで「人間参加型(Human-in-the-Loop)」アプローチを重視しており、AIが生成した患者さんに対するすべての指示が臨床医によって厳格に、かつ確実に検証されているということに重きを置いています。SRIが大きな貢献を果たした重要な要素の一つは、「反事実分析(counterfactual analysis)」に関する機能です。提案された介入手段をとったときに予想される結果について、臨床医は「もし~ならどうなるのか」という具体的な質問をこのモデルに問いかけることができます。
この初期導入時のデータが蓄積されるということは、Vaalia Healthにとってこのアプローチを検証する重要な機会が得られるということを意味します。「今年はこのモデルを導入して、これが患者さんの治療に大きな影響を与えられることを実証することに全力を注ぐ年になるでしょう」とAhonala氏は述べています。
服薬遵守率のような課題に関しては、患者さんにとって複雑な問題が数多く存在しているとAhonala氏は指摘しています。具体的には、経済的な負担や支出計画、薬の副作用、薬物相互作用、知識や意欲の不足、さらには適切な水分補給や食事といった基本的な生活面のサポートなどがあげられます。個別化された治療のアプローチでは、このような要因をすべて考慮することになります。もし、因果AIがこの個別化の一助となるのであれば、患者さんや医療従事者、そして保険会社から製薬会社に至るまで、医療システム全体にとって大きな利益となることでしょう。
この画期的な可能性を秘めた医療プラットフォームを拡大するにあたり、SRIのベンチャー部門は不可欠な存在であるとAhonala氏は付け加えており、「SRIには、新技術を立ち上げて製品化してきた輝かしい実績があります。本当に素晴らしいことです」と述べています。
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