Christiana McFarland:テクノロジー主導の世界における戦略策定から影響を及ぼすまで

Christiana McFarland

SRIのイノベーション戦略・政策センター(CISP)に所属するMcFarlandは、政府や地域の技術革新を持続可能な成長へと転換させるエコシステム構築の「道しるべ」に


SRIのイノベーション戦略・政策センター(Center for Innovation Strategy and Policy:CISP)は、科学と技術、そしてイノベーションへの投資に対する経済的・社会的な影響を長期にわたって効果的にもたらせるよう、クライアントを支援しています。アリゾナ州やオレゴン州から英国、日本に至るまで、CISPは新興イノベーションの成長を後押しするロードマップや戦略を策定しています。バイオサイエンス業界を今後の州経済にいかに位置づけるかの再考や、AIを活用した地域のスキルに関するギャップの特定に至るまで、あらゆる取り組みを支援しています。

ここでは、CISPのエグゼクティブディレクターであるChristiana McFarlandがこのセンターがどのように成果を達成したかを詳しく説明するとともに、テクノロジー主導の経済発展における自身の歩みと、SRIの広範なエコシステムが紙の上だけではなく現実世界で機能するイノベーション戦略を策定するにあたり、CISPにどのような優位性を与えているかについて説明します。

CISPの業務はどのようなものなのですか?

私たちは連邦政府機関や各種研究開発機関、そして地域や様々な国と連携しており、イノベーションをもたらす場面の創出を支援しています。具体的には、科学技術に関する投資が長期的に見て戦略的かつ大きな成果を生むために、どのように投資を配分すれば最も効果的なのかを判断します。人材パイプライン(人材の継続的な供給体制)や研究インフラ、政策環境といったイノベーション関連資産の強みと弱みを把握するだけでなく、資産の連携やイノベーションの拡大が進むよう、協力すべき人材や組織のネットワークについても多大な時間かけて理解を深めています。CISPでは、エコシステムの緻密な分析と、ステークホルダーとの親密な連携の両面からプロジェクトに取り組んでおり、策定する戦略が地域・産業・組織の実情を確実に反映するようにしています。

「テクノロジーは成長の強力な推進力となり得ますが、混乱も同時にもたらすことから、先見性と適応力が求められるのです」―Christiana McFarland

CISPの決定的な強みは、世界有数の研究開発機関の一部であるということです。ロボット工学やバイオサイエンス、そしてAIなどの分野で最先端の技術開発に携わる同僚がラボの中にいることで大きな恩恵を受けています。これらの分野の知見を積極的に取り入れ、技術面における現在の位置と将来の可能性との両方を戦略に反映させるよう努めています。例をあげると、米国エネルギー省の国立研究所と提携して新たな核融合エネルギーの商業化センターに関する実現可能性(フィージビリティ)を評価したときのベースとなったのは、SRIがディープテック(先端科学の成果を基盤とする社会変革型技術)を市場化へと導く道筋を築いてきた長年の実績でした。

商業化と現実社会への応用を見据えた戦略を設計できる能力を備えていることから、CISPは分析だけでなく、具体的な成果をあげられるような、エコシステムを加速させるロードマップを提供できます。

このようなプロジェクトに取り組むキャリアを選択したきっかけは何でしょう?

私のキャリアは常に、様々な国や地域がどのように成長し、適応していくのかを理解することに力を注いできました。全米都市連盟(National League of Cities)では、住宅や土地利用、財政、経済開発など、各々の地域システムと密接に関連している数々の課題に取り組んできました。私はそのシステム自体に、つまりその仕組みやどのように適応していくのかに強い関心を抱くようになり、博士課程の研究で深く探求したのは、サプライチェーンと人材流動、および、インフラを介して地域経済が互いに支え合う仕組みでした。

時が経つにつれ、このようなシステムを形成するにあたり、科学技術が果たす役割にますます惹かれるようになりました。テクノロジーは成長の強力な推進力となり得ますが、同時に混乱ももたらすことから、先見性と適応力が求められます。私がCISPでの取り組みに魅力を感じているのは、システム思考に関するこれまでの経験を生かしながら、地域社会がテクノロジーの変化を乗りきれるよう支援を提供する機会があるからです。

例えば、近年はウィスコンシン州の電動化戦略の策定を支援しました。電気自動車のサプライチェーンをマッピングし、インフラと人材のギャップを特定するとともに、ウィスコンシン州を世界レベルで競争力のあるハブ地域にする施策を提言したのです。また、アリゾナ州の「2025~2030年アリゾナ州バイオサイエンス・ロードマップ(Arizona Bioscience Roadmap 2025–2030)」を主導した際にも同様の胸の高まりを感じました。このときは、地域の研究と人材に関する資源を、精密医療やAIを活用した創薬といったグローバルなチャンスと結びつけています。
このようなプロジェクト、つまりシステム分析と技術戦略を融合させて経済競争力を牽引する取り組みこそが、私の最大の原動力です。

CISPの業務では、どのようにAIを活用していますか?

AIはこれまで到底不可能だった規模で洞察を生み出せることから、今や私たちの業務に不可欠なツールです。例えば、オレゴン州の2024年人材評価では、自然言語処理を用いて数千件に及ぶ求人情報を分析しました。これにより、ヘルスサイエンスから先端製造業に至るまで、様々な分野におけるスキルのミスマッチを詳細に把握することができました。どの職種が成長しているのかだけでなく、どのようなスキルが不足しているのか、そしてそのギャップをどのように埋めていくのかを州が理解する上で有益な知見を提供しました。

「AIは効率性だけではありません。先見性も持ち合わせているのです」―Christiana McFarland

今後を見据えて、最も期待される可能性の1つとして、このような労働力の分析を、SRIのラボで開発している他のモデリングツールと連携させることがあげられます。これらのツールでは、産業が新しいテクノロジーに適応する過程やサプライチェーンの進化、新たな産業クラスターが時間を経てどのように成長するのかといった動きのシミュレーションが可能です。AIによるスキルの予測をこれらと組み合わせれば、現時点でのギャップを把握できるだけでなく、将来的に人材と技術、そして市場がどのようにお互いに影響を及ぼすのかを理解するにあたり、リーダーたちを支援することができます。

AIは単に効率性だけでなく、先見性も持ち合わせています。これらのツールをエコシステムの設計過程に組み込めば、イノベーション能力や人材育成、インフラへのより賢明な投資につながるような実践的かつ先見性のある知見を意思決定権者(デシジョンメーカー)に提供することができます。

エグゼクティブディレクターとして、CISPのビジョンについて教えてください

CISPの強みは、テクノロジー、市場、そして政策の整合性がとれた戦略の策定と、これを実践的な成果へと導けることにあります。

私たちのアプローチは、あらゆる多様な状況において効果を発揮しています。プログラムの評価、重要なデータシステムの構築、研究のセキュリティプロトコル開発の分野では、複数の連邦政府機関の信頼を獲得しています。州レベルでは、私たちが策定を支援したマサチューセッツ州のロボティクスロードマップが、資産の整理にとどまらず、スタートアップ企業や産業成長を支援するゼロエクイティアクセラレーター(スタートアップ企業から株式の割当てをうけない支援者)プログラムの立ち上げを促しました。ネバダ州では、私たちが策定に深く関与した「Waterwise Economy(水資源節約型経済)」フレームワークが州の立法機関に指針を与え、水に関する技術への新規投資を呼び込みました。このフレームワークでは、イノベーションの設計によって競争力とレジリエンスの両方を強化できることを示しています。米国以外では英国や日本でエコシステムのマッピングから戦略的機会の特定、そしてプログラムの設計までを手がけています。これらは、エコシステムの原理をグローバル規模に拡大できること、そしてイノベーションを加速させられることを示しているのです。

「私たちは、エコシステムを持続的な経済的・社会的影響を生み出す原動力へと変えるため、大胆かつ実践的な戦略構築を目指しています」―Christiana McFarland

今後を見据えて、CISPはイノベーションを促進する触媒としての役割をさらに強化していきます。エコシステムを持続的な経済・社会的インパクトを生み出すエンジンへと変えていくために、大胆で実践的な戦略の構築を目指しています。

Center for Innovation Strategy and Policyについて詳しくはこちら、SRIへのお問い合わせはこちらからお願いします。


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