SRIはいかにディープテックを手掛けるスタートアップの商業化を加速させているのか

Entrepreneurs at a table

SRIのEntrepreneur-in-Residence(客員起業家)プログラムに参加しているイノベーターは、科学における画期的な進歩を商業的な応用へと落とし込むにあたり、またとないチャンスが与えられている


短期間で成功を収められるような幸運に恵まれたスタートアップ企業はほんの一部に限られています。例えば、2010年10月初旬にユーザーがゼロだったInstagramは従業員がわずか13名だった2012年4月に10億米ドルでFacebookに売却されました。

一方、「ディープテック」のスタートアップ企業(AIや材料科学、バイオメディシン、量子技術など、科学の根本的な進歩を基盤にするスタートアップ企業)は成熟するまでに時間がかかります。研究室の中で完璧なソリューションにたどり着こうとすると、それだけで10年を超える年月を要することもあるのです。

SRIのベンチャー部門のVice PresidentであるTodd Stavishは次のように述べています。「科学の根本的な進歩に関する技術を市場で通用する製品やサービスに落とし込むことは、通常、1年で完了するプロセスではありません。SRIは、このディープテックの商業化プロセスを加速させるべく、Entrepreneur-in-residence(客員起業家)プログラムを設立しました。このプログラムでは、起業家が一から始めるのではなく、SRIの研究者と協力する機会やSRIの知的財産へのアクセス、そして特定ソリューションの潜在市場を探る機会を提供します。SRIの技術には、連邦政府から希薄化しない(non-dilutive)研究開発資金として1000万米ドル以上の支援を受けているものもあります。私たちは、既に研究室で検証された技術を現実の世界に投入するにあたり、重要となる最後の推進力を与えられるプログラムであることをアピールし、起業家たちに参加を呼びかけています」

EIR(客員起業家)プログラムの仕組み

SRIのEntrepreneur-in-residence(客員起業家)は、非常に狭いニッチな技術分野でインパクトを与えようと力を尽くしている人々だとStavishは感じており、「彼らは自らが何を成し遂げたいか理解しており、また、SRIがそれを実現するための技術を保有しているということを認識しています。この起業家たちは、ある特定の分野でSRIの技術の商業化が可能かどうかを調査し、ベンチャー企業のコンセプトを定義するためにここにいるのです。このEIRプログラムを終了するときのゴールは、独立した組織としてスピンアウトできるベンチャーを立ち上げるということです」と述べています。

非営利の研究開発機関として、SRIは連邦政府という資金提供者が率先して推し進める量子センシングや協働ロボット工学、サイバーセキュリティ、クリーンエネルギーなど多岐にわたる分野で開発した知的財産(IP)の大半を保有しています。これらの発明は、数多くの産業分野に応用できる可能性を秘めていますが、業界のニーズを満たすにはさらなる精査が必要です。

「SRIのベンチャーを支援するアプローチが他と異なる点は、起業家に数多くの先端技術を提供できるということ、そして、その技術を探索・改善するための明確なプログラムを提示できる点にあります」―Todd Stavish

Entrepreneur-in-residence(客員起業家)プログラムに参加する起業家は、SRIの研究者たちと協力してプロトタイプを構築します。また、インタビューや業界分析を実施して、プロトタイプを市場の空白領域に適合させるよう取り組みます。このプログラムは、スタートアップの観点から、新規事業に伴う技術リスクと市場リスクを大きく軽減することを意図しているのです。

また、このプロセスは、ある特定の技術を商業化したいと思っているSRIの研究者が、業界の動向に精通した経験豊富なビジネスパートナーをCEOとして迎えて開始することもあります。例えば、Membravoの創業者兼CEOであるJoe Sawa氏は、SRIの研究者であるMilad Yavariと連携したことで、SRIのIndira Jayaweera率いるチーム(Yavariを含む)が開発・試験した水素分離膜に魅力を感じ、SRIのEIRプログラムに参加し、このEIRプログラム内でこの技術の商業化の可能性をさらに検証しました。また、製品化の準備が整った暁には、YavariがCTOとしてMembravoの一員となったのです。

また別のケースでは、SRIが保有するテクノロジー全体を、時間をかけて探求する起業家もいます。その一例であるAvsr AIも、先般SRIからスピンアウトした企業です。Avsr AIは、現実世界のパフォーマンスデータと最先端のロボティクスアルゴリズムを組み合わせて、ロボットの器用さと自律性の向上を目指しています。そして、SRIが保有する知的財産のコレクションは広範囲に及びます。Avsr AIの創業者兼CEOであるVikrant Tomar氏は、EIRプログラムに参加しているときにSRIのAIとロボティクスに関する発明を幅広く探求し、これら商業展開を目指すロボットのトレーニング方法改善を目的とした単一のプラットフォームに統合しました。

イノベーションからインパクトへ

MembravoとAvsr AIは、Intuitive SurgicalSiriなど数多くのSRIのスピンアウト企業の中でも最も新しい2社です。スピンアウト企業は、SRIのインパクト戦略の一環として、創業当初から存在しています。SRIは総計で200億米ドルの市場価値に相当するスピンアウト企業を70社以上も設立してきました。

「SRIのベンチャーを支援するアプローチが他と異なる点は、起業家に数多くの先端技術を提供できるということ、そして、その技術を探索・改善するための明確なプログラムを提示できる点にあります。SRIでは、想像もしないようなイノベーションを、消費者や企業が購入したいと思う製品に落とし込むのがいかに困難かということを理解しています。そして幸いなことに、すべてがうまくかみ合った時の結果も目撃してきました」とStavishは述べています。

SRIのベンチャー部門とEntrepreneurship-in-Residence(客員起業家)プログラムについての詳細は、こちらまでお問い合わせください。


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